人　�閨@歳　時　記　1

自然と関りあう人々の生活をのぞいてみました。

2004年〜2005年掲載分

狭　野　神　楽

　　　　　　　　　　　　鬼の面をつけた踊り　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　出を待つ演者

狭野神楽：
　12月3日（土）、毎年12月の第一土曜日が狭野神楽の日です。祓川神楽と並んで高原町を代表する神楽祭で、狭野神社の参道横の空地で行われました。参道には夜店も4軒ほどでてにぎやかで、夜店の横で狭野小学校の3年生が打ったソバが高原高校生の手でふるまわれました。裸電球の下で舞われる神楽の写真は暗くてうまく撮れません。右の写真の出を待つ演者は小学校5年生だそうです。

狭野神社秋の例大祭

神主登場：
　10月23日は狭野神社の秋の例大祭でした。
　狭野神社は霧島神宮の別宮で格式が高いので、神主さんが常時6人もいます。今日は秋の例大祭なので神社本庁の使いとして宇都神宮の宮司さんも参列し、祝詞を奏上しました。更に楽人4人共に登場です。

　奉納四半的大会：
　昭和30年代ころまではこの例大祭には参道に露天が並び、奉納剣道大会、柔道大会、弓道大会が行われていたそうですが、現在は露天は並ばず、この四半的大会が行われているのみです。当日の参加者は宮崎県下及び一部熊本県や鹿児島県からも参加者があり、４６チーム、２２０名の参加者だったそうです。
　四半的とは4寸5分（13.5ｃｍ）の的を4尺5寸（13.5ｍ）の距離から射る弓道の一種で、ご覧の如く座って弓を射るのが特徴です。南九州地方で比較的盛んに行われているスポーツです。
　

6　月　灯

　6月灯というのは旧暦の6月に行われる薩摩藩時代からの伝統行事といわれていますが、今では豊作、子供の水難防止と健やかな成長を祈って開催されます。この地区では手作りの灯篭（ツルと言います）奉納を初め諸行事がありました。
　7月19日（日）児童館に親子で集まり、老人会の協力の下に灯篭の枠を作りました。その枠を家に持って帰り、家で灯篭に紙を張り絵を描き仕上げます。
　7月23日夕方、出来上がった灯篭を児童館の庭に吊るします。児童館裏のプールではまず神主さんのお祓いがあり、その後にプールで風船釣りなど楽しい行事がありました。

　　　　　　　　老人会の人の手助けで灯篭作り　　　　　　　　　　　　　　お父さんと灯篭作り

　　　　　　　　　　　出来上がった灯篭　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　風船釣り
　　　　　　　　　　　

あくまき（灰汁巻）つくり

　五月に入ると多くの家々では「あくまき」をつくります。昔は端午の節句に作ったものだそうですが、好きな人は年に何回もつくります。元々は薩摩に伝わる腰兵糧と聞いています。出来上がったものは封を切らなければ　1、2週間は腐らないそうです。

用意するもの：竹の皮、木灰、もち米
　竹の皮は去年の竹の皮を用います。3,4日水につけて置きます。そうすると丸まっていた竹の皮が平たく伸びます。
　大きなザルに布巾を敷きその上に木灰を置き、熱湯を掛けます。布巾で越して灰汁を取ります。もち米4Kgに対し木灰は1Kg。
　前日にもち米を洗って一晩灰汁につけておきます。

竹の皮にもち米を入れ、包みます。

包んだものを竹の皮の紐で縛ります。
それを大きな釜に灰汁と一緒に入れて4時間ほども煮ると出来上がりです。

あくまきの出来上がり：
　出来上がりはお米という感触は無く、ついてないのにモチという感じです。そのままでも食べられますが、たいてい黄な粉や砂糖などを付けて食べます。美味しくて常に食べたくなるというものではありませんが、素朴な味がして年に何回かは食べたくなります。
　今回は91歳のご婦人の方に作る過程を見せていただきましたが、手際の良さには驚かされました。竹の皮を水につけたり、灰汁をつくったり、何日も前から準備しなければならないのは大変な手間です。
　若い人たちほどこのような伝統的な食物を作らなくなっているのは全国的な傾向でしょうか。しかし、この辺りではどこのスーパでも時期がくれば必ず店頭に竹の皮や木灰や灰汁が並びます。

狭野神社のお田植祭

5月16日（月）、狭野神社においてお田植祭がありました。神主さんたちの祝詞奏上、地域の人たちの玉ぐし奉奠などの行事のあと、この地域に伝わる棒踊りと、奴踊りが奉納されました。

出を待つ棒踊りの演者達：
　足袋に草鞋、手甲脚絆。踊りの動きが激しいので着物の前をからげています。頭には頭巾を被っており、踊る時は頭巾を下ろして目だけ出して踊ります。左の人が持っている長い棒は長刀と棒です。右の人は短い木刀と鎌です。踊る時はそれぞれどちらか一本だけを持って踊ります。つまり、棒と鎌、棒と刀という具合です。

狭野の棒踊り：
　棒踊りはそもそも400年ほど前に島津義弘が朝鮮の役で凱旋してきた時の戦勝祝いの踊りで、この地方には多くの地区にあるようです。高原町の他の2地区にも残っており、踊りに若干の違いがあります。
　踊りは唄にあわせて踊られます。歌い手は笠を被っており、その笠には30ｃｍほどの飾りが笠の縁からたらされています。
　踊りというよりも愛知県の棒の手のように激しい打ち合いをする殺陣のようなもので、勇壮なものです。

狭野の奴踊り：
　　昭和15年、皇紀2600年を機に都城の志和地地区から導入されたものだそうです。勿論最初は男性が踊っていましたが、戦後男性の踊手が不足し、男女混合の時代を経て、高度経済成長時代の、昭和30年頃より全面的に女性になったと狭野神社禰宜の松坂さんのお話でした。
　

ワラビ取り

桜の花が散りだすと今まで静かだった野原に、にわかに人が湧き出すように現れます。道のあちこちに車を止めている人が目立ちだします。夫婦づれ、女性のグループ、男の人が一人でなど、ゼンマイやワラビ取りです。その成果を見せてもらいました。

ベブがハホ

　狭野神社で毎年２月１８日に行われる行事で正式名は「苗代田祭」といいます。この地方では牛のことを明治30年代まで「ベブ」と、母親のことを「ハホ」と呼んでいたそうです。「が」は「ａｎｄ」という意味で、牛と母親というような意味だそうです。５００年余りの伝統のあるお祭りです。
　まず、拝殿の中で神主さんの祝詞奏上、地域の人々の玉ぐし奉奠があり、そのあと、拝殿前に四方に竹を立て一定の広さに縄を張り、その内側を斎田（苗代田）と見做し、神主さん達が儀式にのっとてお払いや和歌を奏上するなどの行事があります（和歌の文句は決められている）。

神主が退場すると顔に墨を塗った下男（デカン）が数名現れ、先がL字型になった木を鍬に見立てて耕作の真似事をします。そして「親方よおー」と親方を何度も呼びます。待つこと暫し、親方が現れ（背中を見せている人）、下男と会話をします。これは一種の掛け合い漫才のようなもので、話の内容は臨機応変、「青色申告に行っていて遅れて…」というような話で時々観客から爆笑が起こります。話の合間に耕作の真似事をしながら鍬で下男同士の足を引っ掛けて倒したりします。時には遠慮会釈なしに縄張りのすぐ外の観客の足も引っ掛けます。
　当日は雨が降ったためブルーシートの覆いの下で行われました。

「ベブよー」と何度も下男が呼んで、やがて車に乗ったベブが下男に引かれて登場します。ご覧のように精巧に出来てはいますが以外に小さいものです。皆で引き回し、耕作の真似事をし、退場します。

やはり「ハホよー」と何度も呼ぶこと暫し、女性の面をかぶったハホ（実際は男性）が種籾を頭にのせ、大きなお腹をさすりながら登場します。斎田を一巡すると神主が現れ、種籾を受け取り、ハホに先立って斎田の中を一巡しながら種まきをして退場。行事は終了します。
蛇足：
戦国時代頃までの日本語では母はファファと発音していたのでその名残りでハホとなったと思われます。

祓川神楽

宮崎県には約330もの神楽が残っています。この高原町にも夜神楽があり、祓川神楽は毎年１２月の第二土曜日夜7：00から行われます。祓川地区には約65戸があり、そのうち門徒20戸ほどをを除いた霧島東神宮（旧称、祓川神社）の氏子45戸位の人たちで継承されています。（この辺りではお寺の門徒と神社の氏子が明確に分かれています。）過疎化と老齢化の波の中で伝統芸能を守っていくのは大変です。

ヤタンバン（八咫の盤）：
四方に鳥居を配し、その結界内が講庭といい、その中で神楽が舞われます。講庭の中央には孟宗竹の笹つきをたらし、丁度講庭の中央に垂れるようにヤタンバンを吊り下げます。

神楽：
神楽は全部で33番ありますが、そのうち5番目「神楽」です。四人で日本刀と幣を持って緩やかに踊ります。踊り終わって四隅に退き、正座すると、襷掛けの若者（30歳くらいか）が現れ、両手に刀をもって激しく踊ります。その勇壮さと躍動感には目を見張るものがあり大いに感動しました。（裸電球の下で暗くその写真が撮れなくて残念！）

大光神：
7番目「大光神」、花道から鬼の面を付け、扇子を持ってきらびやかな衣装を着た神が登場し、ゆっくりと踊りながら講庭を一巡りし、椅子に腰掛けます。弓矢を持った人が2人現れ、鬼との問答をしますが、鬼が面をかむっているせいもあり、何をしゃべっているのかわからず残念。

干し柿つくり

干し柿つくり：
この辺りでは朝晩の冷え込みが厳しいので干し柿つくりに適しているようです。昔は何処の庭にも渋柿が植えられていたようですが、時代の流れで干し柿を作る人も少なくなったようです。大きな木に柿が鈴なりで誰も取らないのはたいてい渋柿です。出荷用の渋柿で売り物にならない物をいただき、干し柿を作りました。
　柿の肩のところを包丁で皮を剥き、その後は皮むき器で皮を剥きます。約１００個を二人で皮むきだけで１時間もかかりました。あとは柿に紐をつけ、熱湯で消毒し、竿にかけます。更に、ハエ対策のために、カンレイシャで覆い、センタクバサミでハエが入らないようにします。夜には夜露がかからない様にシートで覆をかけます。出来上がるまで２回ほど手でもみます。３週間くらい干して出来上がり。おいしい干し柿が出来ました。買っても安いものですが、自分で作った物を食べるのは格別です。

秋の筍

シホウチクのタケノコ：
　このあたりではシカクタケと呼ばれています。名前の通りやや四角いのが特徴です。１０月初旬に知人から届き食べました。秋に筍を食べられるとは大いに驚きましたが、このあたりでは特別珍しいものではないようです。アクが強いというのでスライスして24時間水でさらして食べましたが筍の色は少し茶色でした。コリコリして大変おいしいものでした。
　歳時記を調べたらタケノコは夏の季語であるらしく春でるタケノコを「春の筍」というそうです。秋の筍という言葉は見当たりませんでした。
　写真右は成長後の竹です。下のほうの節毎に下向きに鋭い棘が出て、一見して変わった竹という感じです。この棘は気根だそうです。

お茶つくり

5月に入ると、多くの家庭では茶摘をして、自家消費の茶を作ります。
その製法は釜煎り茶といわれる製法で九州地方一円で行なわれているようです。
お茶つくりには大変な労力が要りますのでたいてい家族総出か、親戚や隣近所で助け合ってやります。

摘んだばかりの茶葉
このあたりでは多くの家の生垣や畑の隅に
お茶が植えられています。まれには機械で
摘む人もいますが、たいていは手摘みです。
茶摘は一人ではできないので家族総出や
親戚を頼んだり、隣近所の応援を頼んで
行ないます。

釜煎り
大きな釜で茶葉を炒ります。釜の下で火を
たき茶葉がしんなりするまで炒ります。この
作業は釜のそばに座るようにして行ないま
すので熱く、その上熟練を要します。

　茶葉をもむ
　しんなりした茶葉をもむ。結構力が要ります。
　たくさんの茶葉をもむと疲れます。

「ふいろ」にて乾燥する
竹でできた「ふいろ」で乾燥する。下には炭火が
置いてあり、長時間かけて乾燥します。その間
茶葉が燃えてしまわないように何度もかき混ぜます。
※「ふいろ」の意味、字はよく分かりません。

お茶つくりに参加した感想としては大変な労力で疲れました。今までお茶をもらって飲んでいましたが、
これからは感謝、感謝の気持ちを忘れずにお茶を飲みたいと思います。